第97章 答え合わせ
「時透君の家族だったんだね」
華は無言で頷いた。宇那手は、小動物の様に頬を擦り寄せて来た時透を、優しく撫でてやった。
「良かった。君の命を繋げたんだ。始まりの呼吸の剣士の血筋を守れたんだ」
「そんな事はどうだって良いんだ! 僕の手を握るためだけに危険を冒した姉さんが、生き延びてくれて、嬉しいんだ。本当は⋯⋯傍にいたいけど」
「ごめんね、火憐」
華は深く頭を下げた。
「私は、なんとかしがらみから逃れたかった。貴女が私と同じ体質を引き継いでいると知って⋯⋯戦う様に作られた身体だと知って、なんとか逃れたかった。貴女を自由にしたかった。⋯⋯誰にも相談出来ない内に、どんどん頭が働かなくなって⋯⋯いっそ死んだ方が楽だと⋯⋯。貴女まで巻き込んで⋯⋯」
「⋯⋯でも、今はどう思っているの? やっぱり死んで、傍にいて欲しい? 私は、そんなに長く生きられない」
「⋯⋯生きて欲しい。帰りたいのでしょう? あの人の所へ。それで、貴女が幸せになれるのなら⋯⋯束の間でも、幸せに生きられるのなら⋯⋯」
「鬼を許せた私が、お母さんを許せないはずが無い。話してくれてありがとう」
宇那手は、笑みを溢し、共に戦って来た柱を見回した。
「まさか、あの父上が、煉獄の血を引かぬ、女性に羽織を贈るとは!」
煉獄は、宇那手の肩をバシバシ叩いた。
「君は完璧に跡を継いでくれた! いや、俺以上に素晴らしい剣士になった! 君を誇りに思う!」
「ひやひやしましたよ。貴女が童磨も許すんじゃないかって」
胡蝶は笑顔で毒を吐いた。
「アイツがこっちへ来たら、何度でも地獄へ蹴り返してやります。カナヲの視力を奪った恨み、忘れません。私が無責任に犠牲にしてしまったあの子を、守り通してくれてありがとう」