第97章 答え合わせ
「だけど、最期に救われた」
猗窩座は、若い娘の隣で拳を握り締めていた。
「知らなかった。あんな技があったなんて。何百人も殺しておきながら、痛みさえ感じず死ねるなんて。ここは通さない。連れて行くのはお前だけだ」
彼は鬼舞辻を指した。元鬼だった、全ての者が鬼舞辻を恨みがましく睨んでいた。
「累」
宇那手は、直接交戦をしなかった少年に歩み寄った。
「せめて、貴方が家族と一緒になれて良かった。貴方も、望めば此方へ来られる。⋯⋯それから貴女も」
累の姉役を演じていた少女が涙を流していた。彼女は、同じ家族の妹に裏切られ、累に殺された。あの偽りの家族の中では、母役と並んで、優しい心を持っていた少女だ。
「鬼狩りなんていなければ、貴女達は、更に罪を重ねる事は無かった。ごめんなさい。助けてあげられなくて、ごめんなさい!!」
「火憐」
懐かしい声に、宇那手は息を呑んだ。何と地獄の炎の中に産屋敷耀哉がいたのだ。
「全て、君の言う通りだった。私たちは罪を犯していたんだ。その報いを受けている。⋯⋯鬼舞辻無惨」
彼は、鬼舞辻に手を差し伸べた。
「同じ一族の者として、お前は私が連れて行く。火憐に背負わせはしない。何があっても」
無数の手が、鬼舞辻に伸びた。
「やめて!! お願い!! この人を責めないで!!」
宇那手は、鬼舞辻にしがみついた。右腕の感覚が無く、引き止めるのは不可能だと分かっても、そうせざるを得なかった。
「この人は生まれて初めて人を信じて、そして裏切られた! 私が裏切ったの!!」