第97章 答え合わせ
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「死んだのか」
暗闇の中で、鬼舞辻は宇那手に問い掛けた。彼女は肩を竦めて見せた。
「戻れる様です。でも、貴方を一人に出来ない。一緒に──」
「来ないで!!」
鋭い少女の声が響いた。隣にいる少年の姿のお陰で、宇那手は、彼女が堕姫だと分かった。
「アンタはこっちに来ちゃダメだよ!! 絶対に通さない!! ダメ!!」
彼女は、一時的に地獄の炎から逃れ、宇那手に抱き付いた。
「アンタだけだった。毎日毎日、私達を許してくれたのは!! 幸せになって良いって、祈ってくれた!! 救われたの!!」
「うん。私は恨んでいません。私を助けてくれた貴女の事を」
宇那手は、子供の姿をした綺麗な女の子の頭を撫でた。
「だから、もう良いの。貴女も、明るい方へ行きなさい。貴女達兄妹は、本当にどうしようも無かった。人間は誰も貴女達を救わなかった。本当に、仕方がなかったのよ。生まれた時代や、場所が悪かった。貴女達に非は無いわ」
「⋯⋯行けない。何百人も殺して、そんな簡単に許されない。ねえ。アンタはどうして許してくれたの?!」
「また、人間に生まれて欲しかったからよ」
宇那手は、穏やかに微笑んだ。
「人間も、捨てたもんじゃないと思って欲しかった。今度こそ、当たり前の幸せを掴んで欲しいの。⋯⋯貴方達も」
彼女は、これまで斬って来た、祈って来た鬼達に目を向けた。
童磨が、猪之助と良く似た顔立ちの女性と一緒にいる事に驚いた。
「⋯⋯その人は」
「俺が喰った⋯⋯琴葉だ。傍に置こうとした⋯⋯。この人は、本当に心が綺麗だったんだ。俺のために、地獄へ堕ちても良いと言ってくれた。今なら、理解出来るよ。空っぽだった心に詰まっていた物が、全て無くなって、初めて気が付いた。俺は⋯⋯」
「貴方はまだ、炎から出られないみたいね。でも、何時かきっと、救われる。私の思いを継いだ子達が、祈り続けてくれているはずだから」
宇那手は、次に猗窩座に目を向けた。
「可哀想に。記憶を失って、ずっと、意味も分からずに戦わされ続けた」