第97章 答え合わせ
真っ暗闇の中に、ポツンと現れた姿を目に、宇那手は、顔を綻ばせ、涙を零した。
「胡蝶⋯⋯カナエさん? 貴女に会ってみたかった」
「カナヲを守ってくれてありがとう」
カナエは天女の様な笑みと、声色で宇那手を包み込んだ。
「貴女に会いたいという人は大勢いるのよ? でも、みんなまだやる事があって⋯⋯」
「やる事⋯⋯?」
宇那手は、ハッと藤の花の匂いに気が付き、上を見た。
鬼舞辻が、地獄の底へ炭治郎を引き摺り下ろそうとしている。亡くなった隊士、柱が必死に炭治郎の身体を押し上げ、生き残った隊士が彼を引き戻そうとしている。
「炭治郎、待て!! 待ってくれ、頼む!!」
鬼舞辻は、なりふり構わず叫んでいた。
「私の意思を、思いを継いでくれ!! お前が!! お前ならなれる!! 究極の生物に!!」
「心を燃やせ、竈門少年!」
煉獄が叫んでいた。伊黒も。
「何のために俺が死んだと思っている? 俺はお前が大嫌いだ。こっちへ来るな」
「竈門君!! 頑張って」
胡蝶が、細い腕を必死に伸ばしていた。
「火憐ちゃん?!」
突然飛び出した宇那手に、カナエは心底驚いた。そして、その後の行動にも。
「私を置いて行くなァァァァ!!!」
絶叫する鬼舞辻の体にしがみついたのだ。
「もう良いのよ、鬼舞辻無惨。貴方は一人じゃない」
宇那手は、ただ一人、鬼舞辻に対して言葉を放った。
「楽になろう。全てやり直そう。丈夫な身体に生まれて、幸せになろうよ」
「⋯⋯火憐」
鬼舞辻は、伸ばした腕を下ろし、振り返った。彼と宇那手は、亡者の手によって、地獄の入り口へ引き摺り下ろされた。