第15章 協力
「いや⋯⋯お前が不快なのではない。寧ろ──」
冨岡は慌てて口を噤んだ。何かとんでもない事を言いそうになったことは、確かだ。彼は顔が熱くなるのを感じ、そっぽを向いた。
「早く部屋に戻れ」
「師範は──」
「俺はもう少し此処にいる」
「⋯⋯かしこまりました」
宇那手は大人しく従った。彼女が屋内に戻ってから、胡蝶は冨岡の側で、からかう様に笑った。
「確かに、あんな姿で側にいられたら、我慢出来ませんよね? でも、ここでずーっとしゃがんでいても、どうにもなりませんよ?」
「分かっているが、あの娘はお館様にとっても特別な存在だ。傷物には出来ない」
冨岡は、もう一度深呼吸し、踵を返した。明日も早い。煉獄との戦いで、拾弐ノ型を使わせるのなら、宇那手の負担を減らす為に、冨岡自身も力を使う必要がある。休息が必要だ。
隣のベッドに寝ているのは、猫だと思う事にした。