第96章 理不尽
鬼舞辻は、内側からなんらかの攻撃を喰らい、動きを止め、そして⋯⋯
凄まじい断末魔と共に塵となって消えた。
一瞬遅れて、隊士たちの歓声が響いた。
「うわぁぁぁぁぁ!!!!」
「倒した!! 無惨を倒した!! 無惨が死んだ!!」
「終わりじゃないぞ!! 怪我人の手当てだ!! 急いで救護に回れ!!」
「泣くな馬鹿!! しっかりしろ!!」
「火憐様」
宇那手の元にも隠が来た。
「すぐに横になってください!!」
「駄目。継子が⋯⋯竈門君を先に⋯⋯」
炭治郎の元には、既に冨岡が向かっていた。彼は、宇那手を振り返って首を横に振った。
(⋯⋯おかしい。命の気配が残っている⋯⋯。違う!!)
宇那手は、素早く炭治郎に駆け寄った。冨岡も状況を認識していた。彼は隠を庇ったが、衰弱していた宇那手は、炭治郎⋯⋯いや、鬼の攻撃をかわしきれず、首に深い傷を負って倒れた。
(理不尽だなぁ⋯⋯)
宇那手は、そのまま意識不明の重体に陥った。
危険を顧みず、すぐに近くの隠が宇那手の止血を試みた。
「炭治郎!!」
冨岡はやりきれない思いで叫んだ。炭治郎が、近くの隠よりも、離れた位置にいた宇那手を攻撃したのは、細胞に脅威として記憶されていたからだろう。そして、共に戦っていたから、動作が読めたのだ。
「動ける者、武器を取って集まれーっ!!」
冨岡は周囲に呼び掛けた。
「炭治郎が鬼にされた! 太陽の元に固定して焼き殺す! 人を殺す前に炭治郎を殺せ!!」
(これが⋯⋯報いなのか。人を犠牲に生き続けた、俺への⋯⋯)