第96章 理不尽
炭治郎も限界だった。彼は弱体化した鬼舞辻を、突き技で壁に縫い止め、歯を食いしばっていた。
彼を切り刻まんと鬼舞辻が管を動かしたが⋯⋯
「もういい加減にしてよぉ!!」
甘露寺が駆け付けて、生身で鬼舞辻の腕を掴んでいた。
「馬鹿ァ!!」
彼女は最期の力を振り絞って、鬼舞辻の腕を力任せに引きちぎったが、反撃を喰らい、両腕を失った。
不死川が、血だらけになって戻って来た。最早執念で鬼舞辻に斬り込んだ。
いよいよ後が無くなった鬼舞は、巨大な口を開け、炭治郎を飲み込もうとしたが、伊黒が割り込み、彼を庇った。
(⋯⋯どうして、私の体は動かないの!! 仲間が⋯⋯犠牲になって行く⋯⋯)
宇那手は、地面を濡らした。
「夜明けだ!! このまま踏ん張れェェェ!!」
不死川の叫びを聞き、鬼舞辻は東を見た。日が昇る。
彼は衝撃波を放ち、伊黒、不死川、甘露寺が吹き飛ばされた。しかし、炭治郎は食い下がっていた。
「⋯⋯私の継子」
宇那手は、根性で起き上がり、炭治郎の手を握りしめた。冨岡も、同時に同じ行動を取っていた。三人の力が合わさり、炭治郎の刀が赤く染まった。
夜明けだ。
鬼舞辻は、最終手段に出た。陽光焼けを遅らせる為に、巨大化したのだ。
「竈門君!!!」
炭治郎の体は鬼舞辻に飲み込まれてしまった。
宇那手が策を練っていると、建物の上階から本棚が落ちて来て、鬼舞辻に直撃した。車が特攻した。
生き残っていた隊士や、隠が動いたのだ。
路面電車を壁の様に押し付け、鬼舞辻の行手を阻んだ。
動ける柱は全員其々の技を使った。
「しぶてェんだよ糞がァァァ!! さっさと塵になりやがれェ!!!」
不死川は激怒していた。鬼舞辻は、路面電車の上にのしかかり、あわや隠が押し潰されそうになったが、悲鳴嶼が鉄球の鎖を首に絡め、引っ張った。隊士も協力していた。
鬼舞辻の身体は、既に焼けつつある。
何処までも生き汚い鬼は、土に潜ろうとした。
「心底軽蔑する!! 一人で地獄に堕ちろ!!」
宇那手は、罵倒と共に、日の呼吸を乱発した。
(駄目! もう⋯⋯本当に限界⋯⋯)
彼女が刀を手放してしまいそうになった時。
(竈門君?!)