第95章 隻腕の剣士
「そんな事、誰にも言わせない!! 貴女は誰より強い剣士だ!! もっと⋯⋯自分を誇ってください。貴女が守っていなければ、カナヲは死んでいた!! 義勇さんが大怪我をしていた!! 貴女だけが、無惨に特攻した剣士を守った!!」
「⋯⋯ありがとう。⋯⋯これは、貴方が持っているべきね」
宇那手は、藤の御守りを炭治郎に差し出した。
「無一郎君の形見です。彼と共に、生き抜いて欲しい」
「どうして⋯⋯? 今、そんな事を──」
「絶対なんて事は無いんです。どれだけ計算しても、努力しても、朝が来る保証は無い。ただ一つ言える事は、一般隊士の君が死んで、私が生き残る事は決してない」
「そんな──」
「柱であれば、誰であれ後輩を庇います。若い芽は摘ませない。未来を託します」
「あ⋯⋯あ⋯⋯」
炭治郎は、戦いの最中だと言うのに、涙を堪えられなかった。
(煉獄さん⋯⋯。お願いします! 火憐さんを守ってください!! この人は⋯⋯この人は⋯⋯貴方の願いを完璧に継いだ⋯⋯素晴らしい人です!! 俺に出来る事は⋯⋯)
「三の倍数で出します!! 時間稼ぎなら、それでも同じはずです!!」
「分かりました。ですが」
宇那手は、冷たい笑みを浮かべながら、炭治郎と自身の額に愈史郎の札を貼った。
「最初の一巡は、六の倍数にしましょう。鬼舞辻は死ぬ程驚く筈です。その後は、四の倍数に戻し、私が潰れそうになったら、貴方の判断で三の合図を送ってください。どちらかが潰れてしまうより、余程良いので」
「ろ⋯⋯六?!」
炭治郎も、死ぬ程驚いた。
(六って事は、火憐さんは五つ出すって事か?! そんな事、出来るのか?!)
出来るのだろう。しかし、何故? と疑問が浮かんだ。