第94章 最終決戦
余裕が出来たお陰で、悲鳴嶼は武器同士をぶつけて赫刀を発現させた。それを見ていた不死川も、冨岡と刀をぶつけ合い、再現した。
「夜明ケマデ、一時間三分!!」
鴉の声を聞き、焦りを覚えたのだろう。鬼舞辻は管を一気に増やした。
そして⋯⋯。
「⋯⋯洒落にならないわね」
宇那手は、胡蝶の刀を突き出していた。左手で最も軽い刀を握り、技を出して周囲の人間を庇った。
誰も、何が起きたのか分かっていなかった。宇那手とカナヲを残して、周囲の隊士全員が建物にのめり込み、血を流していた。
宇那手と悲鳴嶼のお陰で、その他の柱と隊士は致命傷を避ける事が出来た。しかし、動ける状態では無い。伊黒と不死川は意識を失っていた。
そして、宇那手自身の右腕も、肘の下辺りまで、鬼舞辻の胸に吸収されていた。
「⋯⋯カナヲ。逃げなさい」
宇那手は、ギリギリで庇いきった少女に命じた。しかし、彼女は宇那手のすぐ後ろにへたり込み、動けなくなっていた。
「カナヲ!!」
「で⋯⋯出来ない!!」
カナエに似た女性が、しのぶの刀を使い、鬼に吸収され掛けているのだ。二度も見過ごす事は出来なかった。
(立たなくちゃ! この人が⋯⋯殺されてしまう⋯⋯!!)
「誓い通り、四肢を捥いでやろう」
鬼舞辻の言葉に、宇那手は笑みを返した。
「貴方程、学習能力の無い馬鹿も、そうそういませんよ。私の右腕に、何があったと思います? 今、私の右手が、貴方の心臓を握っている事が分かります?」
宇那手は、執念で拳を握り、心臓を潰すと、左手に持っていた刀で、自らの右腕を斬り落とした。
「カナヲ!! 火憐様!!」
隠の後藤が、なりふり構わず二人を米俵の様に抱え、脱兎の如く後退した。
その時、笛の音が響き、続いて無数の銃声がこだました。
鬼舞辻が後藤を仕留め損ねたのも、銃弾を避けられ無かったのも、未知の毒を喰らったからだ。
(あの娘!! 何を使った?! 藤ではない!! しかも!!)
弾丸が体内で破裂し、更に毒を喰らった。追おうにも、最初からその様に指示されていたのか、建物内の隊士は逃げ出していた。連携が取れているのだ。宇那手は、二か月、鬼殺隊と接触していなかったはずなのに。