第94章 最終決戦
宇那手、伊黒、甘露寺、冨岡の四名が鬼舞辻に斬りかかっていた。
「えっ?! えっ?! あれっ? 斬ったのに斬れてない?!」
甘露寺は混乱して叫んだ。
「違う。再生している。想定内」
宇那手は、冷静に、技を連続して繰り出した。出来る限り体力を消耗しない様に。
「落ち着いてください。目的は夜明けまで粘る事。逃亡を阻止する事。その二つです」
しかし、次の瞬間。宇那手の目の前に名も知らぬ隊士の遺体が転がっていた。胴が切断されている。
「行けー!! 進めー!! 前に出ろ!!」
階級の低い隊士が声を振り絞っていた。
「柱を守る肉の壁になれ! 少しでも無惨と渡り合える剣士を守れ!! 今までどれだけ柱に救われた!! 柱がいなけりゃとっくの昔に死んでたんだ! 臆するな! 戦えーっ!!」
「やめなさい!!!」
宇那手は、手の届く範囲の隊士を蹴飛ばし、あるいは押し飛ばし自分の背後に押しやった。庇った。
しかし、他の柱はその余裕が無かった。一瞬で、大勢の隊士が犠牲になった。
「馬鹿者!!」
宇那手は、助けた隊士たちを叱り飛ばした。
「後衛の隠と合流しなさい。貴方達はまだ貢献出来る。援護は不要です」
「やはり貴様が、頭ひとつ飛び抜けて強いな」
鬼舞辻は、宇那手に注目した。その分背後が疎かになり、他の柱の一斉攻撃を喰らった。
宇那手は、その隙に難を逃れた隊士を撤退させ、立て直した。
鬼舞辻は不機嫌極まりない表情で宇那手を睨んだ。
「殺しておくべきだった。最初から分かっていた」
「今となっては、難しいと思いますよ」
柱が宇那手の壁になっていた。鬼舞辻にとって、途轍も無く厄介な布陣だった。此処まで無傷で乗り越えて来た宇那手は、縁壱に準ずる脅威だ。真っ先に抹殺すべきだが、それを痣者の柱が阻む。宇那手は必要な援護をし、陣形を切り崩すのは困難を極めた。