第93章 反旗
鬼舞辻が復活した。彼は繭を突き破り、周囲に配置されていた隊士を皆殺しにした。
産屋敷輝利哉は、目を通じてその様子を目の当たりにし、凍りついてしまった。
(僕のせいだ。僕が采配をしくじった。そのせいで大勢の人が虐殺される。みんなが何百年も、今日この日のために、無惨を倒すためにして来たことが、全て⋯⋯。何もかも僕のせいで無駄に⋯⋯)
「輝利哉様!!!」
くいなが輝利哉の頬を引っ叩いた。
「しっかりなさいませ、お館様!! 早く次のご指示を!! 戦いはまだ終わっていません!! 目を⋯⋯目をしっかりご覧ください!!!」
輝利哉は呆然としつつ、神経を多方向へ集中させた。これまで見えて来なかった物が見えた。
(殆どの隊士が南にいる? 鴉の声を無視したのか? ⋯⋯いや、違う! あの子達は火憐の継子だ!! 火憐が、隊士を逃がしていた!! 柱は既に北へ向かっている!!)
「無惨の位置を捕捉し続けろ。鴉はとにかく目を撒け。攻撃の間合いが途轍もなく広い。一般隊士を奴に近付けるな。柱を全員集結させる」
彼は、幼いながらに、冷静さを取り戻していた。
「かなた、くいな。ありがとう」
「はい」
くいなは、自身も親を失った痛みに堪えながら返した。