第15章 協力
「⋯⋯分かっている」
冨岡は、産屋敷との会話も思い出した。あの時、宇那手は彼の目の前で「後も引き受ける」と言った。そこから想起する内容は、それほど重要では無いのだ。
選別に関しても、実際に最終選別が決行されれば、全ての隊士に方法が伝わるだろう。
一見重要に思えて、それほど重要では無い事しか話していない。
「嘘の匂いがしなかった」
冨岡は、剣を収めて呟いた。
「嘘を隠す事に長けている。真実を織り交ぜ、相手を引き込む事で、巧妙に騙している。騙されていると分かっても、踏み入る事が出来なかった。嘘が無いからだ」
「お館様の事に関しては、探ることすら不遜なのかもしれません。私たちは、無意識にその様に考えて来ましたが、あの子は多分、踏み入った。だから信頼され、様々な事情が重なり、友人になれた。鬼舞辻を血眼で滅しようと尽力して来たお館様が、逃げる様に指示したのは、あの子を生かしたかったからなのかもしれません」
胡蝶は、少しくたびれた様子でその場に蹲った。
「私たちの代で、終わりにしましょう、冨岡さん。あの子や、カナヲが柱の役割を継ぐ前に、鬼舞辻を殺しましょう。協力していただけませんか?」
「⋯⋯分かった」
冨岡は静かに頷いた。
「鬼舞辻を殺すという一点に於いて、協力しよう」
「⋯⋯本当ですか?!」
胡蝶は心底驚いて顔を上げた。冨岡は孤高の剣士であり、柱の誰とも連携して戦おうとはしなかった。例え産屋敷の命令であっても。
「俺は姉と友、鱗滝様の十三人の子供を鬼に喰われた。この上家族と弟弟子まで喰わせる気は毛頭無い!!」
冨岡は、かつて無い程怒りを露わにして叫んだ。奪われる苦しみはもう、十分味わった。そろそろ、本気で死や絶望に抵抗すべきだ。そのためには、手段を選んでいる場合では無い。何故なら、鬼舞辻無惨も正々堂々と、手段を選んで戦う保証が無いからだ。