第91章 上弦ノ弐、上弦ノ参
「しのぶ、カナヲ、猪之助!! 三名ニヨリ!! 上弦ノ弐撃破!!」
鴉が叫んだ。
(良かった⋯⋯。目も、行き届いて来ている)
「⋯⋯状況が変わりました。作戦を変更します。この中に、最近刀鍛冶の里で、特殊訓練を受けた者はいますか?」
半数が手を挙げた。
「結構。私の事は放置して構いません。訓練を受けた者を、残りの者が命懸けで守りなさい。この空間はいずれ崩壊し、地上に出ます。隠の中に、私の継子がいます。彼女の指示に従い、札で鬼舞辻の目を欺き、周囲の建物に退避する様に。其処に”物”があります」
(でも、どうするべき? 鬼舞辻に近付き過ぎても危ない。遠過ぎれば、全く異なる場所に飛ばされる可能性がある)
宇那手は、考えた。必死に考えた。考える事が、彼女の一番の特技だったから。
(童磨より猗窩座、猗窩座より黒死牟⋯⋯北へ近付いている。均等に配置されているとして、此処は中間地点より、少し南⋯⋯)
「北上します!! 上弦は私が引き受ける!! 皆は、その直前に離脱しなさい」
宇那手は、返事を聞くより先に駆け出していた。不満も、反論も聞く余裕は無かったのだ。