第91章 上弦ノ弐、上弦ノ参
カナヲは、宇那手の手の平に書かれた血文字を目にし、すぐに状況を理解した。
(この人は、計画を知っているんだ!)
“待”の一文字を宇那手は握り潰して消した。
「童磨、人生相談があるんだけれど」
「君⋯⋯この状況で、中々悠長な事を言うね。面白いから聞いてあげるよ」
「今、二つの道で迷っているの。貴方を殺して無惨様を助けに行くか、貴方に殺されて無惨様を待つか。貴方ならどうする?」
「俺なら確実な方を選ぶよ。無惨様が死ぬわけないからね。殺して、助けに行く」
「貴方と意見が合うとは思いませんでした。勿論、私もそうします」
宇那手は、刀を構え直してカナヲを背後に追いやった。
「だ⋯⋯駄目!」
カナヲは、宇那手の後ろ姿とカナエが重なるのを見て、声を上げていた。
「ソイツは私が斬るの! 約束したの!」
「私も約束したんです。しのぶさんと。もう、年下の子供たちを死なせない、と。貴女を継子として引き受ける、と」
「やっぱり、君は鬼狩りを辞めたんじゃなかったんだね」
童磨は冷たい笑みを浮かべた。
「残念だなあ」
「そうでしょうか? 思う存分殺し合いが出来ます。⋯⋯それよりも、私は貴方が哀れでならない」
宇那手は、極めて冷静な口調だった。
「良い指導者というものは、部下の危機に駆けつけるものでしょう? 貴方は鬼殺隊最強の剣士を前にしているのに、誰にも助けて貰えない。可哀想です」
「俺に敵うと思っているんだ。そんなに頭が残念だとは思っていなかったよ。⋯⋯おや? 猗窩座殿が戦っているね。柱と⋯⋯痣のある少年⋯⋯」
「⋯⋯」
宇那手は、初めて、微かに動揺した。しかしすぐに呼吸を整え、不敵に微笑んだ。
「問題ありません。あの二人なら、勝てますよ。実質柱が二人いる様なものです」