第90章 無限城
「明日の晩、無惨が此処へ来ます。教えてください! 柱は、戦えますか? 冨岡さんは、戦える状態でしょうか?!」
「問題ありません。全員健康状態は良好。柱稽古にも、積極的に打ち込んでおります。ですが⋯⋯」
あまねは表情を曇らせた。
「新たに痣を発現させられた隊士は、一人もおりません」
「器が大きくなったからでしょう」
宇那手は、落ち着いて答えた。想定の範囲内だった。
「私は、小さな湯呑みを抱えている状態で、其処に、力を注ぎ込んだ。溢れた分が痣となり、現れた。炭治郎も同じです。今、柱の面々は抱えている器自体が大きくなっています。当時の私と同じだけの無理をしても、痣は出ないでしょう」
「⋯⋯君はまだ、私を⋯⋯安心させようとしてくれるのかい?」
産屋敷は、溶け落ちそうな瞳から涙を零した。
「⋯⋯君の主張は⋯⋯全て正しい⋯⋯。私は⋯⋯私たちは⋯⋯一族の存命の為に⋯⋯⋯⋯数え切れない程の子供たちを⋯⋯殺して来た⋯⋯。隊士とは⋯⋯違う⋯⋯。誰かを守るためではなく⋯⋯血筋を守るために⋯⋯」
「お館様の病は、間違いなく呪いです」
宇那手は断言した。
「この二ヶ月、古今東西の書物を読み、調べ尽くしました。鬼舞辻は、生まれ付き虚弱体質だった。病では無く、個人の体質です。あの時代は、貴族同士の近親婚が多く、それ故に身体に問題を抱えた者が多くいたのです。同じ病が遺伝しているとは思えません。この様な症状は見た事も無い。間違いなく呪いです。鬼舞辻無惨を殺す事で、それが証明出来ます」
「⋯⋯火憐さん」
あまねは、尚深く頭を下げた。
「どうか、生き延びてください。貴女が殺されて仕舞えば、耀哉様は本当に地獄へ堕ちてしまいます! どうか⋯⋯ご無事で⋯⋯」
「私の刀を返してください」
宇那手は、慈愛に満ちた笑みを浮かべた。
「私が遺品として、お館様に託した物です。それが、私とお館様が接触した証拠になる。鬼舞辻は、最後まで私を信頼するでしょう」