第88章 真の狂人※
「神様が作った、失敗作だと思います」
宇那手は、悲しげに微笑み目を閉じた。
「助けてくださって、ありがとうございます」
心底疲れていた。しかし、鬼舞辻が容易に解放しない事は分かりきっていた。
「童磨、その目に焼き付けろ。この娘は、お前が執着するほど綺麗な物では無い」
「なっ──」
宇那手は絶句した。鬼舞辻はこの場で⋯⋯鳴女の傍で致すつもりだ。着物の帯を解かれ、宇那手は叫び声を押し殺し、静かに泣いた。
(義勇さん、ごめんなさい! ごめんなさい!! 私⋯⋯貴方を愛しているのに!!)
「火憐。それほどまでに不快か?」
鬼舞辻の声が宇那手を現実に引き戻す。生き残る為には、心に蓋をするしか無かった。
「いいえ。貴方を美しいと思います」
「嘘も大概にしろ。お前は愛してもいない、鬼に抱かれる事も厭わない、汚らわしい人間だ」
「いいえ。私は何一つ失っていません」
「そうか」
鬼舞辻の指が、宇那手の下半身に伸びた。乱暴に抱かれる事に慣れてしまった体は、あっという間に受け入れる準備を済ませていた。
鬼の長い指が、通常届かないはずの深い場所を抉る。
「う⋯⋯あっ」
宇那手は身体を丸めて声を殺した。その日の鬼舞辻の攻めは苛烈な物だった。
決して挿入する事無く、達せない様に制御し、宇那手の身体を弄り回した。
二時間もの間、宇那手が堪え切れたのも、心の強さが所以だった。
「嫌⋯⋯もうっ!!」
彼女は泣きながら鬼舞辻に縋り付いたが、どうしても、彼が求めている言葉を発せなかった。
「殺して!! 殺して!!!」
「殺さない。そう約束した。良いのか? お前が死ねば、お前との約束は無かった物とする。柱を順に殺す。例外なく。⋯⋯いや、柱の前でお前を殺した方が良いか」
「⋯⋯そうすれば良い」
宇那手は、底冷えする瞳で鬼舞辻を見据えた。
「私は⋯⋯産屋敷だ⋯⋯。どの柱も、例外なく私を慕ってる! 眼前で私を殺せば⋯⋯怒りを買う事になる。その柱は、きっと痣を──あぁ!!」
長い指で、子宮口を突かれ、宇那手は悲鳴を上げた。