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【鬼滅の刃】継ぐ子の役割

第88章 真の狂人※


「やあ、火憐ちゃん。さっきは面白い事をして遊んでいたみたいだね」

 童磨は笑顔で語り掛けた。

(怖い⋯⋯)

 宇那手は、懸命に震えを堪えていた。改めて観察すると、童磨はかなり体格に恵まれており、筋肉質。胡蝶が単身挑んだとして、簡単に勝てる相手では無い。鬼の首が斬れる柱でも難しいだろう。それこそ、死ぬ覚悟が無ければ。

「貴方に聞きたい事がある。十年ちょっと前、貴方が生かして傍に置こうとした女性について」

「覚えているよ」

 童磨は機嫌良く答えた。 

「心が綺麗な子だった。心だけじゃなくて、顔も。⋯⋯可哀想に。殴られて片目を失明していたけれど、顔は元に戻った。可愛い声をしていたなあ」

「どうして? どうして綺麗だと思ったの? 可愛いと思ったの?」

「理由なんか無いよ。だけど変だよね。俺と一つになったはずなのに、消えて無くなってしまった感じがする」

 童磨は胸の辺りを押さえて答えた。

「何でだろうね? 喰わずに、無理矢理生かしておけば良かったのかな? ああ、そうか。もう歌を聞けないからかもしれない。無惨様は幸運だったよねえ」

 彼は手を伸ばして宇那手の頬に触れた。

「君は馬鹿じゃない。俺たちの崇高さを理解出来る。生きたまま、傍にいて、美しいまま死んで行く。人間としては、完璧に近い存在だ」

「⋯⋯心が無いなんて、嘘」

 宇那手は、怯えながら返した。

「心が無ければ、何かを美しいなんて思わない。傍に置こうと思ったのは、愛があったから。幸せだったのでしょう? ほんの僅かな時間でも、満たされていたのでしょう? ねえ、貴方は、どうしてそうなってしまったの?」
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