第87章 着いて行く
「意外だな。鬼を信頼するとは。あの餓鬼が連れていた鬼は刺しただろう? 何が違った? 何故信頼出来ると判断した?」
伊黒は警戒心を剥き出しにした。不死川は、自分で自分に呆れ、笑って仕舞った。
「言葉の重みってェヤツだ。テメェの家族をテメェで刻んで、知性のある鬼を何十匹も殺して来た火憐の言葉だから、信頼した。あの餓鬼とは違う。それだけだ。火憐だから、信じた。これは任せろ」
「⋯⋯分かった。甘露寺には俺が伝える」
伊黒はなんとか了承した。
「あいつは、物事を深く考えない。鬼舞辻に心臓が七つある事だけを伝える。それを口外しない様にキツく言っておく」
「時透はどうする? ある程度状況を理解している様にも感じられたが」
不死川は、時透が遺書の確認にやって来た時の事を思い出した。文書に目を通した瞬間、瞳に光が戻った。
「⋯⋯ダメだなァ。あいつは隠し通せねェ」
「お館様の指示もいただこう」
悲鳴嶼の言葉で会議は終了した。
伊黒と悲鳴嶼が去ってから、不死川は頭を抱えた。この屋敷には、もう一つ問題がある。
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「犬を飼えというのは、不死川様の意見だとお伺いしました。ですので、今後、よろしくお願い致します」
宇那手の継子が、犬を連れて来たのだ。疲れ果てている胡蝶に押し付けるわけにもいかず、彼は渋々引き取った。
「なァ、蓮華。お前の飼い主、達者だそうだぜェ」
不死川が話し掛けると、犬は景気良くワンと吠えた。