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【鬼滅の刃】継ぐ子の役割

第87章 着いて行く


(師範を亡くしてすぐに、陽気に振る舞うお前に対してだ!)

 実際、冨岡は苛つきを抑えきれなかった。炭治郎は、本当に何も知らないはずだ。宇那手が死んだと思っている。立ち直りが早いと言えば、長所の様に思えるが、何処か不気味さを覚えた。

「お前が水の呼吸を極めなかった事に、怒っている。お前は水柱にならなければ、ならなかった」

「それは申し訳なかったです。でも、鱗滝さんとも話したんですけど──」

 炭治郎の話は延々と続いた。

(こいつは俺を気遣っているのか? それとも、柱が戦えない事を気に掛けているのか?)

 冨岡は、話半分に聞き流し、帰れと告げた。しかし、炭治郎は居座った。

(正気か。何故笑っていられる? 喪う事に慣れたのか? 確かに剣士としての適正は高いと言えるが⋯⋯)

 それから、炭治郎は昼夜問わず冨岡を付け回し、話し掛けまくった。

「どうしたんですか、義勇さん?! 義勇さん! どうしましたか?!」

(継子が殺されたんだ、馬鹿者!!)

 冨岡は癇癪を起こしそうになっていた。不死川や伊黒ですら、今回ばかりは冨岡に対して、かなり寛容に、気を配って接してくれていた。特に不死川は、柱合会議以来、全く暴言を吐かなくなったし、伊黒は口数が減った。

(お前は何を考えているんだ、炭治郎。煉獄が殺された時には、随分落ち込んでいただろう? 悲しくは無いのか? 怒りは沸かないのか? 火憐は、お前にとってその程度の人間だったか?! それなら、火憐と関わった全ての時間を俺に返せ!!!)

 四日目。冨岡は橋の上で足を止めた。限界だった。元々復帰する腹づもりでいたのだ。これ以上引き伸ばしても、精神を削られるだけだ。

「俺は最終選別を突破していない」

 冨岡は、親友と宇那手の姿を重ねながら、言葉を紡いだ。
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