第14章 秘密
カナヲの才能に触れた時にも、同じ様に、僅かな恐怖心を抱いたが、宇那手はそれ以上の威圧感を持っていた。
「宇那手さんといい、竈門君といい、鬼舞辻は失敗に失敗を重ねていますね。両者共に脅威になり得る。⋯⋯愚か者です。宇那手さんの家族を殺さなければ、此処まで優れた隊士を産まずに済んだ。案外、終わりは早いのかもしれません。私も、その覚悟を決めなくては」
「⋯⋯これは私の推測ですが」
宇那手は、何処まで話して良いか、十分考えた上で口を開いた。
「お館様は、近い将来鬼舞辻を討つ算段でいます。どんなに長く見積もっても、輝利哉様が元服を迎える前には、全てを終わらせるはず。私は、輝利哉様の身柄を託されました。私に託したということは、奥様や娘さんは犠牲にする覚悟があるのかもしれません。つまり、あの屋敷内が戦場になるかと」
冨岡と胡蝶、アオイは、同時に息を呑んだ。宇那手が背負わされていた物は、想定以上に重大であった。しかし、彼女は苦痛や弱味を一切表に出さず、淡々と続ける。
「私は、三年以内と踏んでいます。当代の柱は精鋭揃いと伺いました。誰かが脱落、若しくは引退する前に鬼舞辻を始末したいはず。⋯⋯季節は冬でしょう。鬼狩りにとって最も不利な時期に、鬼舞辻は動くはずです。ですが、その予測は外れる可能性もありますね⋯⋯。鬼舞辻なら、産屋敷様が油断をしている夏に仕掛けても、勝算があると、傲慢な考えを持っているかもしれない⋯⋯」
後半は独り言の様にも思えた。いずれにせよ、宇那手は胡蝶や冨岡の数段上で思考していたのだ。
「あ、申し訳ございません!」
宇那手は、緊張感を解き、胡蝶に頭を下げた。
「お館様には、近々直接お伺いすると、よろしくお伝えください」