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【鬼滅の刃】継ぐ子の役割

第84章 最期の伝言


「優しい人だね、火憐さんは。本当に⋯⋯優しい人だった。僕が我儘を言っても、困らせ様としても、優しかった。だから、僕たちが、代わりに怒ってあげないと。彼女が何と言おうと、彼女の分まで無惨を憎まないと。⋯⋯憎んでも良いんだよ、炭治郎」

 時透は、炭治郎に手紙を返した。深い思いやりを感じ取り、炭治郎は唇を噛んだ。

(やっぱり、柱は特別なんだ。思慮深くて⋯⋯強くて⋯⋯。俺は、まだ全然足りない。努力はしているんだけどなあ⋯⋯。あの時よりも、ずっと強くなったのに、まだ足りないんだ)

「⋯⋯俺は弱いから、せめて火憐さんの思いを継ぎます。鬼舞辻無惨を救ってみせる」

「やめなよ」

 時透は、愛を以って忠告した。

「炭治郎、本当に分かってる? 火憐さんは、誰より鬼舞辻を愛していた。心から心配していた。話し合って解決しようとして、その結果殺されたんだ。鬼舞辻無惨は、手を差し伸べたあの人の心さえも裏切った。救おうなんて、生温い考えじゃあ、君が殺されてしまう。妹を助けたいんだよね? 駄目なんだよ、炭治郎。もう間に合わない。あの鬼は、後悔さえも間に合わないんだ」

「⋯⋯それなら⋯⋯俺はどうしたら──」

「冨岡さんを助けてあげて。多分、鬼舞辻よりも、この人の事を愛していたから。戦える様に、支えてあげて欲しい。⋯⋯誰よりも、傍にいたかったはずだから」

 時透は、一筋の涙を溢した。

「ずっと⋯⋯一緒にいたかっただろうな⋯⋯。一緒にいられると、思っていたよね⋯⋯」

 記憶障害から、他人を思いやる余裕の無かった時透が、人の為に泣いていた。

「炭治郎。君が本当に全てを理解した上で、鬼舞辻を許して、戦えるなら、尊重する。だけど、あいつのために、もう誰一人死なせなくない。心から許す事が出来ないなら、諦めて。許せるの? 煉獄さんも⋯⋯火憐さんも⋯⋯ずっとずっと、幸せに生きて行くはずだった」

 時透は、冨岡を抱えて部屋を後にした。
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