第2章 柱合会議
「ぷっ」
これには、普段感情の起伏を見せない胡蝶も、堪えきれずに心からの笑い声を漏らしてしまった。他の柱も同じだ。取り分け、これまで不機嫌そうにしていた伊黒と実弥には、絶大な効果をもたらし、緊張を解かせた。
「⋯⋯事実なのですね。どの様な点が問題なのでしょうか?」
ザクザクと容赦なく続ける宇那手に、胡蝶はとうとうお腹を抑えた。当の冨岡は、死んだ目で地面を見詰めている。傍目には無感情に見えるが、確実にショックを受けていると各々の感性で確信した。
「と⋯⋯冨岡さんは口数が少ないですからね。誤解されることが多いのですよ」
やっとの思いで胡蝶が答えると、ようやく宇那手は、合点が行った様子で目を伏せた。
「確かに、もう少しお話ししていただければ、お気持ちを理解出来ると思うことは多々あります。ありがとうございました」
宇那手は、あくまで礼儀正しかったが、根は冨岡と良く似ている。
彼女は産屋敷に視線を移した。
「お館様は、何故私をお呼びになったのでしょうか?」
「君の日輪刀が不思議な状態にあると聞いてね。共有すべきと考えたのだよ。皆に見せてやっておくれ」
「御意」
宇那手は、抜刀した。彼女の日輪刀は、光の角度により異なる色を発していた。赤にも、濃い青にも見える。
「どういうことでしょう?!」
甘露寺が驚嘆の声を上げた。宇那手の代わりに冨岡が口を開いた。
「当初この娘には、炎の呼吸の適性があった。しかし、前述の理由により、干天の慈雨の修得を目指し、鍛錬する内にこの様な変化が起きた。本来なら炎柱に師事するべきだが、強固な意思により、適性が変わったと考えている。⋯⋯一応、炎、水の全ての型を使いこなせる」
「それは見事だ! 俺が引き受けよう!」
煉獄が息を巻いたが、宇那手は首を横に振った。
「私は師範の側にいます。ですが、胡蝶様から毒について学びたいとは考えておりました。鬼を殺す優しい毒について」
「構いませんよ」
胡蝶は感じ良く答えた。
「でも、しばらく間を置いてからにしましょう。⋯⋯宇那手さんは、家族を鬼にされ喪っている。一方、奇跡とはいえ、鬼となっても生きながらえている禰󠄀豆子さんや、竈門君と共に過ごすのは、苦しいでしょう」