第14章 秘密
診察室の扉が叩かれたので、入室を許可した所、冨岡が現れたので、胡蝶は死ぬほど驚いた。彼は柱合会議以外では、絶対に他の柱と接触しない様にしている。
「冨岡さん?! どうしたんですか?!」
「宇那手が炭次郎に用があると言うから連れて来た。⋯⋯⋯⋯明日、煉獄の元へ向かう。泊めてやってくれ」
「勿論構いません。⋯⋯何か、あったのですか? お館様にお会いしたのですよね?」
胡蝶が問うと、冨岡は苦悩した様子で口を開いた。
「お館様は、何か重要な秘密を宇那手に託した。あの娘を友と呼び、柱と同等の待遇を約束した。不死川と甘露時もそれを黙認した。俺に宇那手を守る様にと言った」
「⋯⋯宇那手さんの待遇については、私も聞きました。全面的に賛成です。ですが⋯⋯友人⋯⋯ですか。宇那手さんは、何か特別な力を持っているのかもしれませんね。それにしても⋯⋯不死川さんの意見は、他の柱にも影響を与えるでしょう。貴方を嫌っている彼が、その継子の能力を評価した」
相変わらず、胡蝶は刃物の様に言葉を使い、冨岡の心を抉った。
「そして、宇那手さんは、お館様の秘密を守っているのですね? 貴方にも話さない。だから私を訪ねて来た。⋯⋯何も聞かないであげる方が、優しさではありませんか? 貴方に嘘を吐き続けている事を、思い出させない方が良いと思います」
「⋯⋯お館様は、鬼舞辻無惨と接触した場合、徹底的に逃げる様に命じられた。そして、何時か鬼舞辻の方から姿を見せるだろう、とも言っていた。何か危険な手段を用いるつもりかもしれん」
「過保護ですね」
胡蝶は苦笑した。
「冨岡さんも、分かっているはずです。那田蜘蛛山で少し交戦して分かりましたが、あの子は私たちの手に負えない程、力を付けています。私は、上弦の鬼とも渡り合えると考えていますよ。お館様が弱味を見せたくなってしまう気持ちも理解出来ます。これまで、あまり考えて来ませんでしたが、お館様も人間ですので」
「だが──」
冨岡が食い下がろうとした所で、診察室の扉が開いた。宇那手とアオイが入って来たのだ。
「胡蝶様、お願いを聞いていただけませんか?」
宇那手はぺこりと頭を下げた。