第13章 託す
「師範のためです。貴方に協力しますので、血液を採取する物を、私にも分けてください」
「あ、はい!」
炭次郎は、愈史郎から預かったキットを纏めて六本宇那手に差し出した。
「確かに受け取りました。当分、私にお任せください」
それから、彼女は押し黙っている伊之助に目を向けた。まだ喉が回復していない様で、喋れる状態では無いと分かった。
代わりに、先程怒鳴り付けた善逸の両肩に手を置いた。
「戦わない、という判断をする事も、一つの勇気です」
「え⋯⋯?」
「鬼殺隊は、剣士だけで構成されているわけではありません。伝達を担当する隠や、アオイ様のように、負傷者を手当てする人員も必要不可欠です。貴方が師匠になんと教わったかは分かりませんが、前線を退く事は、恥ではありませんよ」
宇那手はニコリと笑い、善逸から離れた。天井を見上げ、顔を顰めた。
「禰豆子さんは、眠っているのですね。一人きりでいる様ですが⋯⋯」
「はい。⋯⋯鬼なので、部屋を暗くして休ませています」
炭次郎の言葉に、宇那手はパッと振り返った。
「鬼舞辻無惨は、日光を克服していないのですよね?!」
「? ⋯⋯はい」
炭次郎は首を傾げた。宇那手は背中に汗をかきながら、それを隠して一礼した。
「またお伺いします」
急ぎ足で病室を出ると、アオイが待機していた。
「アオイ様。文を書きたいので、筆を貸していただけませんか?」
「構いませんが⋯⋯どなたに?」
「此処ではお答え出来ません。お許しください」