第83章 遺書
刀鍛冶の里の戦いから三日後、正式な柱合会議が開かれた。
本来ならば、上弦に対抗し得る痣について話す場であったが、全員一様に口を噤んでいた。
戦いの次の晩、柱たちの鴉が一斉に叫んだ。
──水炎柱、宇那手火憐! 鬼舞辻無惨ト格闘ノ末死亡!!
あまねが入室しても、冨岡は頭を下げず、ぼんやりしていた。夢だと思いたかった。
「大変お待たせ致しました。本日の柱合会議、産屋敷耀哉の代理を、産屋敷あまねが務めさせていただきます」
彼女は深く頭を下げた。
「そして、当主の耀哉が、病状の悪化により、今後皆様の前へ出られぬことが不可能になった旨、心よりお詫び申し上げます」
「承知⋯⋯。お館様が、一日でも長く、その命の灯火を燃やしてくださることを、お祈り申し上げる⋯⋯。あまね殿も、お心強く持たれますよう⋯⋯」
悲鳴嶼が代表して言葉を返した。というより、他の柱は口を開くこともままならなかった。
「柱の皆様には、心より感謝しています」
あまねは、淡々と禰󠄀豆子の状態、痣の話を伝えた。最初の痣者が竈門炭治郎だった事も、痣の代償が寿命である事も。
痣の発現条件については、時透が正確に把握しており、それを伝えた。
しかし、それだけ重大かつ、命に関わる話をされても、全員心あらずだった。
「⋯⋯次に、遺書をお渡しします」
あまねは沈痛な面持ちで、一人一人に手紙を手渡した。
「火憐さんは、これまで関わった全ての隊士に、手紙を遺して逝かれました」
「⋯⋯オイ⋯⋯嘘だろう?」
不死川は、遺書を受け取り、肩を震わせた。何かの間違いかと思っていたのだ。策があって、死んだふりか何かをしているのだと思っていた。しかし、遺書を突き付けられた事で、宇那手の死が、現実の物であると再認識させられた。
「⋯⋯っ」
傍目に、最も衝撃を受けていたのは、時透と甘露寺だった。二人は直前まで宇那手と共にいたのだ。
冨岡は、文面に目を通すことも出来ずに、項垂れていた。
「どうして⋯⋯。どうして一人で鬼舞辻と⋯⋯」
胡蝶は、薬の調合が書かれた手紙を涙で濡らした。
「独りで⋯⋯どうして⋯⋯」