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【鬼滅の刃】継ぐ子の役割

第82章 上弦ノ肆


「鴉!!」

 宇那手が呼び掛けると、産屋敷が使っている、最も優秀な個体が舞い降りた。

「鬼舞辻は動いた?」

「浅草ッ!」

(動向を隠していない。つまり、私が向かうと想定している)

「嗚呼⋯⋯どっちが踊らされているんだろう?」

 宇那手は、苦笑しつつ、山を降りた。最寄りの藤の紋の家に立ち寄り、預けていた荷物一式と着替えを済ませ、即浅草へと向かった。


 深夜近くに、豪邸の門を叩くと、当たり前の様に鬼舞辻が姿を現した。

「また、無傷か。しかも、あの刀⋯⋯」

「どうやら、約束を守っていただけた様ですね」

 鬼舞辻からは、血の臭いがしなかった。少なくとも、昨晩は誰も殺していない。

「現れましたよ。日光を克服した鬼が」

「⋯⋯それを伝えに来たのか? お前の立場が理解出来ん。何が望みだ? 何を企んでいる?」

「疲れただけです。⋯⋯心底疲れ、嫌気がさした。私はもう、戦いたく無い。ですが、ただ逃げるだけでは、隊律違反者として処分される。当然給料も無くなりますし、見つかれば自刃を求められる可能性もあります。一番安全なのは、貴方の側です」

「寝返るのか?」

 鬼舞辻は疑心暗鬼になり、宇那手の心を覗き込もうとした。しかし、何処までも深い暗闇と、絶望が続いているだけだった。

「鬼になるか?」

「いいえ。永遠に戦うのは嫌です。でも、私を傍に置く事で、貴方は様々な恩恵を受けられる。私を斬れる剣士はいません。上弦を生身で討った私には、価値がありませんか? 疑うのでしたら、常に行動を共にします。⋯⋯私はまだ十八です。どんなに短く見積もっても、二年は身体能力の衰えが無い。そして貴方が嫌う劣化⋯⋯老化が始まる前に死にます。それまで、静かに過ごせる様、命の保証をして欲しい。勿論、必要があれば、貴方のために少しの戦いは請け負います」
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