第82章 上弦ノ肆
(あの刃は⋯⋯。これは無惨様の記憶?! 何故だ?! 私は⋯⋯私は⋯⋯)
「盲人のフリをしていた?」
宇那手は、クスリと笑いながら距離を詰めた。
「それなら、もう一度、切り裂いてあげないと。盲人の痛みを味わいなさい」
彼女は日の呼吸を使用した。その姿は、当然鬼舞辻にも共有されている事だろう。
赫刀の傷は容易に癒えない。宇那手は甘露寺の元まで退がり、微笑んだ。
「回復しました?」
「う⋯⋯うん! もう大丈夫!」
「私は本体を追っても良いですか?」
「待て!!」
半天狗が目を押さえながら叫んだ。まだ傷が塞がっていない。
「貴様、あのお方を裏切ったのか?!」
「何のこと? 私は鬼狩りで、柱。そんな事は鬼舞辻無惨も百も承知で取引に応じたのよ。貴方⋯⋯ええっと名前は──」
「半天狗だ!! 物覚えの悪い──」
「半天狗ね。可哀想だけれど、此処でさよならよ。私は望まず鬼になった人を助けたいから、戦っているのだけれど、貴方は埒外みたいだし」
「この尻軽!!」
「確かに私の尻は軽いわよ。体重も殆ど無いし。もう一つくらい、技をお見せしましょう」
(日の呼吸、参ノ型、烈日紅鏡)
二連撃が半天狗の目と口を切り裂いた。背筋が凍る様な悲鳴が響き、甘露寺は縮み上がった。
「⋯⋯火憐ちゃん。あの⋯⋯えっと⋯⋯」
「甘露寺さん、後はお願いします」
「違う⋯⋯違うよ。貴女は首を斬れる。私と違って、余裕が無いわけじゃないのに⋯⋯」
「ああ、勘違いしないでください」
宇那手は溜息を吐いた。
「痛ぶって楽しんでいるわけではありません。貴女は、この鬼が分裂すると言った。首が急所で無いことは、以前から把握していました。恐らく首を切った結果、分裂したのでしょうっ!!」
彼女は刀を振るい、半天狗の技と腕を切り裂いた。
「殺せないなら、出来る限り深手を負わせるしかありません。自害してくださるのなら、その方が良いに決まっている。でも、無理でしょう? 私はこの鬼よりも、貴女の命を優先します。⋯⋯時間を無駄にしました。失礼します」