第81章 上弦ノ伍
(あー、これ大丈夫だわ。今すぐ離れても平気)
宇那手は、完全に玉壺を見限っていた。救い様が無い。次の一撃が最後になる。
「君はさ、どうして自分だけが本気じゃないと思ったの?」
時透は、実質一人で玉壺の首を落とした。
「お終いだね、さようなら。もう二度と生まれて来なくて良いからね」
「待って!!」
宇那手は、刀を抜いて駆け寄った。切先を玉壺の目に突き付けて問う。
「貴方は何故鬼になったの? 人を殺した事を後悔していない?!」
「黙れ黙れ黙れ!!! 貴様ら百人の命より、私の方が価値がある!! 選ばれし⋯⋯優れた生物──」
「助けてあげられなくてごめんね。貴方の為には祈れない」
宇那手は、心底冷ややかな声で告げ、刀を突き刺した。
「⋯⋯無一郎君、大丈夫?」
「記憶⋯⋯戻ったよ。薬も、ありがとう。大丈夫。⋯⋯甘露時さんも来たみたい」
「次は私が戦うから、君は三人をお願い。少し休んでいて」
「分かった。多分、あっちの方が手こずってる。頑張って」
「任せて」
宇那手は刀を鞘に収めて走り出した。