第81章 上弦ノ伍
「頑張るけど、守り切れるとは限りませんからね!!!」
宇那手は、鋼鐵塚に叫んでから、時透の隣に並び、赤い簪を彼の腕に突き刺した。
「血清」
「ありがとう、火憐さん」
時透は落ち着いた様子で刀を構え直した。
「素晴らしい微塵切りだが、壺の高速移動にはついて来られない様だな」
玉壺の挑発に、時透は表情一つ変えなかった。
「そうかな」
「何?」
「随分感覚が鈍いみたいだね。何百年も生きてるからだよ」
瞬間、玉壺の首がパックリと割れた。
「次は斬るから。お前のくだらない壺遊びに、何時迄も付き合ってられないし。火憐さんも、炭治郎の方へ行って良い」
「いや、駄目。動かずの馬鹿がいるから」
宇那手は鋼鐵塚をチラリと見た。まだ刀を研いでいる。良い加減にして欲しい。
「でも、ちょっと任せて良い?」
「うん」
返答を聞くなり、宇那手は、鉄穴森の胸倉を掴んで、鋼鐵塚のいる方に投げた。それから茂みに隠れていた小鉄を見つけ、三人を一箇所に固めた。
「すぐに傷を見せて」
「でも、時透殿が──」
「彼は大丈夫」
宇那手は早口に答え、鉄穴森から包丁を取り上げた。彼は全身に怪我を負っていた。
「二人とも、毒は浴びていないわね。小鉄君は、腕を縫います。鋼鐵塚さん。鋼鐵塚さん!! 返事しろや!!」
普段の穏やかな宇那手を見ていた職人二人は、びくりと飛び上がった。
「ごめん! ごめんね! さあ、傷を見せて」
宇那手は治療を進めながら、時透と玉壺の会話に耳を傾けていた。
「舐めるなよ、小僧」
「いや、別に舐めてるわけじゃないよ。事実を言ってるだけで。どうせ君は僕に頸を斬られて死ぬんだし。だってなんだか俺は、凄く調子が良いんだ、今。どうしてだろう」
「その口の利き方が、舐めていると言っているんだ糞餓鬼め。たかだか十年やそこらしか生きてもいない分際で」
「そう言われても、君には尊敬できる所が一つも無いからなあ。見た目も喋り方もとにかく気色悪いし」