第81章 上弦ノ伍

「これほどの集中力、芸術家として負けている気がする。何とかこの男に刀を放棄させたい⋯⋯」

「愚か！！」

　宇那手は凪で職人二人を守りながら叫んだ。

「芸術家なら、技術と作品で勝負をすれば良い！！」

「うるさい！　人間如きが指図するな！！」

　玉壺は次々と攻撃を放って来た。宇那手が駆け付けていなければ、職人二人は重症だっただろう。

　流石の彼女も、鋼鐵塚に対して苛立ちを露にした。

「逃げろや、クソ野郎！！」

　聞いちゃいない。

「壺。名前くらい教えて」

「玉壺だ」

「そう、玉壺。誰のお陰で此処を見つけられたと思っている？　貴方が此処を独力で見つけられなかった時点で負けは確定しているのよ。鬼舞辻無惨は、私を殺さない。お前は、その私を殺せるのか？！　お前は私の力を測るため⋯⋯殺される為に送られた！！　首を差し出せば楽に斬ってやる！！」

　瞬間、小屋の扉から、時透が切り込んで来た。玉壺は慌てて壺の中へ逃れた。

「無一郎君。⋯⋯君、痣が！！」

「何のこと？　でも、ありがとう。時間をくれて」

　彼が踏み込もうとした時、玉壺が血鬼術を使用した。宇那手は見切って逃れたが、時透と鉄穴森が触手に捕まってしまった。

(やはり、私は殺せないか。呪いを恐れている)

「先程は少々手を抜き過ぎた。今度は確実に潰して吸収するとしよう」

　玉壺は締め付けを強くしたが、宇那手は敢えて動かなかった。今の時透なら、対処できると確信があった。

　事実、彼は刀を振るい、拘束から逃れた。

「俺の為に刀を作ってくれてありがとう、鉄穴森さん」

　彼は記憶を取り戻していた。即座に伍ノ型で応戦し、距離を取った。