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【鬼滅の刃】継ぐ子の役割

第78章 月下の約束


「あの!!」

 背後でアオイが叫んだ。

「私は、明日暇です!! 凄く暇です!! だからっ⋯⋯その⋯⋯」

 彼女は足元を見て声を張り上げた。

「洗濯物が幾ら増えても構いません!! 隊服も!! 貴女が取りに戻られるまで待ちます!! ずっと、お待ちします!!」

「ふっ⋯⋯」

 宇那手は、心から笑ってしまった。アオイなりの精一杯の気遣いなのだろう。

「洗濯物は増やしません。ご安心を」

 宇那手は、一礼して踵を返した。冨岡は、彼女の頭に手を置いた。

「俺は洗濯物を増やしても良いと思っている」

「冨岡さん⋯⋯。お願いですから、もう少し、胸が熱くなる様な誘い方をしてください。今日はもう──」

 廊下を曲がった所で、今度はカナヲが姿を表した。今日は任務が無いらしく、髪を下ろして浴衣を着ていた。

「どうしたの?」

 宇那手が問うと、カナヲは木の枝を差し出した。

「あの⋯⋯えっと⋯⋯あ⋯⋯これは──」

「落ち着いて。ゆっくりで良いから」

 宇那手は、深味のある声で宥めた。カナヲは幾分肩の力を抜き、深呼吸した。

「これは、桜の木。初代花の呼吸の剣士が植えた木で、必勝という名前が付けられています。⋯⋯炭治郎に、渡せなかったから、あ⋯⋯貴女に」

「分かった。竈門君に渡すわ」

「違うの!」

 カナヲは、大汗を掻きながら、必死に言葉を絞り出した。

「違う⋯⋯。私、貴女の事も、心配しています。か⋯⋯勝って欲しい。だから⋯⋯だから、炭治郎に渡して欲しいけれど、貴女にも⋯⋯」

「ありがとう」

 宇那手は、カナヲの頭を撫で様と手を伸ばした。瞬間、彼女は両手で頭を覆った。虐待を受けた子供が、無意識に取る行動だ。

「辛かったね」

 宇那手は、代わりにカナヲを抱き締めた。

「良く堪えたね。偉かったね。頑張って生きたから、貴女はカナエさんや、しのぶさんと出会えた。生きるために、努力したから、今がある。貴女の同期は、必ず守ります。貴女が幸せな未来を歩める様、最善を尽くします。だから、仲間や家族を大切に、ね。心の声を良く聞いて。貴女なら大丈夫だから」
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