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【鬼滅の刃】継ぐ子の役割

第76章 鬼ごっこ


「俺はどうだ」

 冨岡は、無表情に割り込んだ。

「水の呼吸も、日の呼吸の亜流なのだろう? 俺は特別な知識も、技巧も持ち合わせていない。柱に相応しいとは言えない」

「勝てます」

 宇那手は、雰囲気をガラリと変え、慈しむ様な表情で冨岡の目の前に膝を着いた。

 胡蝶は、一瞬その慈愛に満ちた表情が、嘘で塗り固められた物なのではと疑ったが、違った。

(この子は、ただ優しいだけじゃない。もっと⋯⋯もっと別の⋯⋯)

「勝てますよ、義勇さん」

 宇那手の瞳には迷いが無かった。

「五代流派の中でも、水の呼吸は、始まりの呼吸の剣士の心を投影した物だと考えています。他の呼吸と、決定的に違う性質の型がある」

「干天の慈雨か」

「そうです。始まりの呼吸の剣士は、優しい人だった。珠世さんを見逃した。善良な鬼が存在する事も知っていた。貴方は、その心を投影した、水の呼吸を極め、独自の型まで編み出した。勝てないはずがありません。貴方が勝てないのであれば、恋の呼吸や、蛇の呼吸の使い手は? 霞の呼吸は? 貴方の敗北は認めません。勝ってください」

 揺るぎない言葉を聞き、胡蝶は唐突に理解した。

(この子は、もう迷いが無いのね。だから、冨岡さんも圧倒されている)

「火憐さん、貴女に謝らないと」

 胡蝶は、腹を括って本音を打ち明ける事にした。

「私は貴女が怖かった。普通じゃない⋯⋯そう思っていました」

「知っていました」

 宇那手は、けろりと答えた。

「みんな、私を奇異の目で見る。悪意は、あったり無かったりだけど、普通じゃない、異常だ、って。冨岡さんですら、今も時々そう。でもそれは──」

「貴女の事を分かっていなかったから。貴女の事を理解出来ないと、思い込んでいたから。想像しようとも思わなかった。貴女が、それほどの覚悟を抱かなければいけなかった理由も、迷いを見せない様に努力をしている事も。私は」

 胡蝶は胸に手を当てた。

「優しい人よりも、強い人が、より好き。貴女の事が大好きです」
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