第76章 鬼ごっこ
「鬼舞辻討伐までに条件を満たせないと思います。上弦二体を私と時透君、甘露寺さんが討ちます。恐らくその後は、無闇に力のある鬼を動かせなくなるはず。上弦が三体も欠けるなど、異常事態です。柱になるのは、無理でしょう。竈門君達も、階級が追い付かない。柱になれる人材はいません」
「中々絶望的な話ですね」
「いざとなったら、育手のジジイ達を戦闘に引っ張り出しましょう」
「火憐さん?!」
胡蝶は絶句した。以前から宇那手の二面性に気付いてはいたが、綺麗な顔から汚い言葉が飛び出た事に衝撃を受けたのだ。
宇那手は、クスリと笑った。
「しのぶさん。同い年で、階級も一緒なので、そろそろお名前で呼んでも良いですか?」
「構いませんよ」
「少々口が悪い点は、目を瞑ってください。他の柱の前では、キチンと振る舞いますから。⋯⋯話を戻すけれど、全然絶望的じゃない。十二体いた、そこそこ強い鬼の半分は、鬼舞辻が殺しちゃいましたから。お館様が柱の半数の首を刎ねた様なもんです」
「そう言われると、正気の沙汰じゃ無いですね」
「上弦一体は既に倒し、二体は私が責任を持ちます。あとは、たったの三体。対して柱は八人。童磨は貴女に任せるとして、かなり余裕があります」
「⋯⋯頭が痛くなって来た」
冨岡は額に手を当てて空を仰いだ。
「俺が変なのか? 上弦を倒す事は、そんなに容易いのか? 宇髄ですら、あの怪我だ」
「宇髄さんは、忍ですし、音の呼吸は技の数も少ない。日の呼吸の、亜流の亜流ですから」
宇那手は、笑顔で毒を吐いた。胡蝶は怖気付くどころか、一緒になって笑い出してしまった。
「火憐さん、分かっていると思いますが、他の柱の前でそんな事を言わない方が良いですよ。私も、亜流の亜流ですね。勝ち目はありますか?」
「あります。鬼殺隊士が刀以外で鬼を殺すなんて、奴らは考えてもいません」
「そう言われると、心強い。私のしている事は、無駄では無いと思えます。カナヲや、この屋敷の子達を、悪戯に傷付けるだけではないんだと、安心できる。嘘偽りの無い、貴女の本当の言葉だから、信頼出来る」