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【鬼滅の刃】継ぐ子の役割

第75章 歩み寄り


「仕方の無い事だ」

 冨岡は無愛想に答えた。

「俺たちは鬼に対する、断固たる殺意を原動力に働いている。火憐やカナエは例外だ。炭治郎も。⋯⋯後悔している」

 彼は一瞬奥歯を食いしばった。

「これ以上奪われたくないのなら、何も手にしなければ良い。己の身一つで戦えば良かった。俺は、あいつが死んだら全ての鬼を例外なく滅ぼして死ぬ。奪われるだけの世界に、生きていたいとは思わない。あいつが生きろと望んでも」

「冨岡さん、思考が絡まっていますよ」

 胡蝶は、意図して呑気な声で指摘した。

「あの子は、自分が鬼舞辻との戦闘に加わる可能性について話していました。気付きましたか? 恐らくその前に、私たちを驚かせる何かをするつもりでしょうが、最終的には生き残った柱と合流するつもりです。まあ、鬼舞辻と戦う頃、私はとっくに死んでいるでしょうし、貴方こそ生きているか分からない。まず、自分が生き残る事を最優先に考えてください。一緒に生き延びてくださいね。私と違って、まだこの世界にいる人を愛しているんですから」

「えーっと、冨岡さんは、火憐さんの事が好きなんですか?」

 炭治郎が、曇りの無い瞳を輝かせながら、前のめりに訊ねた。

(さて、どう答えるのかしら?)

 胡蝶は、ちらりと冨岡に目を向けた。彼は真剣な表情で炭治郎を見つめ返していた。

「愛している。一人の女として愛している」

「あ⋯⋯愛⋯⋯ですか⋯⋯」

 炭治郎は、何故か赤面して俯いた。

「つまり⋯⋯その〜」

「他の男と話しているのを見るのは、不愉快極まりない。触れられるのも、共に過ごす時間を奪われるのも、許せない。理解したか」

「はい! すみません!」

 炭治郎は、あまりの威圧感に、反射的に謝っていた。胡蝶は、目を見開いた。

「はっきりおっしゃるんですね」

「はっきり言っても手を出す馬鹿がいるからな。例え子供であっても、油断ならん。勘違いするなよ、炭治郎」

 冨岡は、スッと目を細めた。

「あいつは誰にでも優しい。お前だけが特別では無い」

「でも、冨岡さんと話す時には、不思議な匂いがしましたよ」

 炭治郎は、無邪気に返した。
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