第12章 唯一の友
「冨岡さんの事を、良くご存知なのね!! 素敵!! 師範と弟子の恋!!」
喋りながら、甘露寺は、とうとう最後の一個の桜餅も口に運んだ。食べる量もだが、食べる速度も異常に早い。
「私も早く、理想の殿方と結ばれたい⋯⋯」
「甘露寺様の、理想の殿方とは?」
「私よりも強い方よ!」
中々難しい条件だ、と宇那手は思った。甘露寺は取り分け鬼に固執をしていなくても、柱として認められている。憎しみを原動力としていないのなら、天性の力だろう。
宇那手は、冨岡と胡蝶、甘露寺以外の柱の面々を思い浮かべた。全員癖が強過ぎる。不死川は、意外と常識的な思考を持っている事が窺えた。煉獄もおそらく話は通じる部類だ。しかし⋯⋯
「⋯⋯師範だけの問題では無い気がして来ました」
胡蝶の言う「みんな」とは、柱のことだろう。正直宇那手も、全員と仲良くなれる自信が無かった。
「甘露寺様。失礼かと存じますが、桜餅はどの程度食べられるのでしょうか?」
「千個⋯⋯いえ、あるだけ全部、かな?」
「⋯⋯」
宇那手は、あまねが何故四個も持って来たのか理解出来た。屋敷の警備に、甘露寺が就いていたからだ。
「火憐ちゃん、何か困ったことがあったら言ってね! 冨岡さんのことでも!」
「はい。是非お話させていただきます」
宇那手は礼儀を重じて頭を下げた。早く屋敷の外へ出たい、という思いが強くなっていた。少し、疲れたのだ。
「すみません。師範が心配しますので、戻ります」
「はい。またね!」
甘露寺は、優しく笑った。暴食と髪の色に目を瞑れば、彼女とは仲良くなれそうだと思った。