第73章 死の淵
「珠世様!!」
「薬が先です」
珠世は、宇那手に、鬼の細胞を破壊する薬を打った。そして、すぐに輸血の作業に移った。
愈史郎は、強く傷口を押さえて、止血を試みた。
「クソ!! そう簡単には止まらないか!! どうすれば──」
「火憐さん!」
浅井は、最も強烈な気付け薬を、師範の鼻に近付けた。直接吸い込めば、気道を火傷すると聞かされていたが、やむを得なかった。
意識を取り戻した宇那手は、微かに頷き、呼吸を切り替えた。
その場にいた全員が焦りから、剣士が呼吸で止血出来る事を忘れていたのだ。
愈史郎の処置と、宇那手の技術で、止血は完了した。そして、最大量の輸血を受けて、彼女はなんとか血色を取り戻し、再び意識を落とした。
「あと一晩⋯⋯様子を見ましょう」
珠世は、久々に額を拭って囁いた。
「大丈夫です。助かりますよ」
その言葉を聞き、不死川は腰が抜けてしまった。二匹の鬼を前に、情けない。
「でェ? 鬼舞辻をどうやって殺すってェ?!」
「薬と、剣士の力を合わせて」
珠世の説明を聞き、その場にいた隊士三人は押し黙ってしまった。
勿論、珠世は薬の成分や、どうやってそれを鬼舞辻に打ち込むかまでは話さなかった。しかし、仔細を除いた情報だけでも、驚愕させるに充分な内容だった。