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【鬼滅の刃】継ぐ子の役割

第72章 忘却の鬼


 冨岡も、槇寿朗も居心地の悪さを感じていた。

 夕刻には、何もない、広い部屋で、宇那手は、不揃いな食器に料理を盛り付け、全員に配膳した。

「おかわりもあるから、遠慮なく食べてね。お米も沢山炊いたの」

 皆、取り憑かれた様に、食事をかき込み、次々と空の器を差し出した。

 幸せな時間だった。

 食事と片付けが済むと、宇那手は弟子達を傍に集めて、幾つもの包みを床に並べた。

「この先の戦いで役に立つと思って用意したの。折り畳み式の鏡。皆、どんな柄が好きか分からなかったから、色々揃えたんだけど、欲しい物を選んで。家族の証よ」

 若い者からと、環と裕司が其々選び、村田達が残りを手に取った。

「俺には?」

 不満気な冨岡に、宇那手は、クスクス笑った。

「貴方には必要ありません。これは、方位磁針と合わせて、無惨から逃れる為の道具です。いずれ、使い方が分かるでしょう。それよりも」

 彼女は弟子達に向き直った。

「今晩、この屋敷は襲撃を受けます」

 その言葉に、全員が背筋を正した。

「と言っても、数字の無い鬼です。悪くて、下弦相当の個体。大丈夫。柱が二人と、元炎柱の煉獄槇寿朗様がいます。問題ありません。ですが、累の様に、使い魔がいると厄介です。その場合、村田さん達にも協力をしていただく事になるかと思います。柱の命令は絶対に聞いてください。撤退、逃走、伝達。この指示には必ず従う様に」

「はい!」

 全員が声を合わせて返事をした。

「今は、時を待ちましょう。私と冨岡さんで気配を探ります。環と祐司は起きている様に。逃走の用意をしてください」

 穏やかな時間が過ぎて行った。村田達は壁に寄り掛かって仮眠を取り、冨岡と槇寿朗は屋敷の雨戸を閉め切って、玄関の傍に控えた。

 宇那手は、両腕に祐司と環を抱いて、静かに目を閉じていた。

 深夜過ぎ。

 遂にその時が来た。

「二人ともこの場に! 村田さん! この子達を守って!!」

 宇那手は的確に指示を出し、玄関へ向かった。

「想定以上ですね。下弦ノ壱程度でしょうか。冨岡さんは抜刀を。累の目を通して、貴方の容姿は認知されているでしょうが、一応刀の刻印を見せた方が良いです。槇寿朗さんは退がって。精神に干渉された場合、貴方が一番──」
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