第11章 産屋敷耀哉
「違います」
宇那手は、産屋敷の言葉を強く否定した。
「同じ血を引いていても、人は個々で性格や物の考え方が異なります。親兄弟であっても。産屋敷様の家系は、鬼舞辻と最も近い存在であったにも関わらず、鬼に与した者はいません。鬼に屈した者もいませんでした。だから、今もこうやって、屋敷を維持出来ているのです。お館様は責任を理由に戦っているわけではなく、己の正義に従っているのです! 何の非もありません」
少し言い過ぎたか、と宇那手は汗をかいた。
産屋敷は、胸の辺りを摩った。昨晩胡蝶に言われた言葉が脳裏に浮かんだのだ。
──あの子と話をしていると、自分の未熟さを突き付けられている様な気がします。
冨岡が、自分より能力の高い宇那手を敢えて傍に置いている理由も分かった気がした。
「火憐、お前を私の子と呼ぶのは止めよう。対等な人間として、これからも知恵を貸して欲しい」
「はい! 何時でもお呼びください!!」
「義勇をよろしく頼んだよ。強いが、脆い子でもあるから。私と話すのは、疲れただろう? 屋敷の庭で休んで行きなさい。お前は実弥とも上手くやれる様だしね」
「お館様も、ご自愛ください」
宇那手は丁寧に礼をし、部屋を後にした。