第71章 If〜砂時計〜
「もう挿れる」
そう宣言すると、冨岡は自身も袴を脱ぎ捨て、一気に奥まで貫いた。
確実に、快楽を得られる様に、子を孕める様に、子宮口を思い切り突き上げた。
「嫌ぁ! やめっ⋯⋯あっ!!」
生理的な涙を流して、殆ど叫ぶ様に身体を捩った宇那手を、無理矢理押さえ付けて、一度射精した。
「達したか?」
返事は無かった。
「宇那手、愛している」
「あ⋯⋯私⋯⋯も⋯⋯。冨岡さん、何を?!」
「名前を呼べ」
冨岡は、一番奥を突き上げながら、腹をぐいぐいと手のひらで押していた。
「義勇さん!! やめて!! それ⋯⋯それ⋯⋯何を──」
「男は刺激で出る。女もそうかと思ったんだが。此処から、子種が出るのだろう?」
「やめて!! 変になっちゃう!! 嫌!! 嫌!!」
そう言いつつも、宇那手の締め付けは更に強くなった。冨岡は、彼女の耳に口を寄せた。
「孕んでくれ! そうすれば、無理は止めるだろう? 孕め!」
「こんなの絶対出来ちゃいます!!」
宇那手は片手で涙を拭い、冨岡の頬に手を伸ばした。
「欲しい。貴方が欲しい⋯⋯」
「やる」
冨岡は短く答えて、もう一度出した。それから、三度射精し、ようやく宇那手を解放した。
それでも、まだ足りないと感じていた。愛は尽きる事が無かった。
一ヶ月後、宇那手は子を孕み、約一年後には男児を出産した。
其処から、転がり落ちる様に衰弱し、彼女は二十六の誕生日を迎える前に寝た切りになってしまった。
食が細くなり、全身の痛みを訴える様になり、遂には自身で処方した、最も強い痛み止めを飲み⋯⋯それでも、タイプライターを手放さなかった。
冨岡が、二十九の誕生日を迎えた直後、宇那手は息を引き取った。
三人の子供を抱え、冨岡は呆然とした。何故年上の自分が遺されてしまったのか。
幸い、子供達の面倒は、産屋敷家が見てくれた。蝶屋敷の面々や、炭治郎達も気に掛けてくれた。
それでも、冨岡は立ち直れなかった。遂には酒に手を出し、毎日毎に、現実逃避をする様になった。
鬼のいない世界で、一度は手に入れた幸せを失い、彼は死をも願った。