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【鬼滅の刃】継ぐ子の役割

第70章 隔てる壁


 水柱が無表情に、自分を見ていたからだ。何を考えているのか一際分からなかったが、恐らく怒っている。槇寿朗はいたたまれなくなり、冨岡と目を合わせた。

「な⋯⋯何か言ってくれ」

「こいつは、死んだ人間の代わりにはなり得ない」

 冨岡は、宇那手の手を掴んで、自分の方に引き寄せた。

「⋯⋯それに、俺は腹が立っている。煉獄が生きていれば、柱の席は未だ全て埋まっていた。こいつが重責を負うのも、宇髄が引退してからになるはずだった」

「冨岡さん」

 宇那手が、窘める様に囁いた。

「煉獄さんの件は、私にも非があるとご存知のはずです。それに、残酷ですが、槇寿朗様は、既に身体能力の全盛期を過ぎています。時期的に考えても、煉獄さんが柱になっていたでしょう。仮に能力を保てていたとしても、痣を出せば、きっと⋯⋯」

「⋯⋯歩けるか? 歩きながら話をしよう」

 冨岡は、槇寿朗を無視して宇那手の背を押した。

「俺は一刻も早く痣を出す努力をするべきなのか? 四年以内に鬼舞辻を殺せるか?」

「何を悠長な事を。半年以内です。その時期を逃したら、次の機会は、輝利哉様が元服し、当主の代わりが生まれて、次の柱に入れ替わってから。そうなれば、当然、痣を出した状態を保ち続けた私は、二十五歳で死ぬ可能性が高い」

「お前は、お館様から、何か計画を聞かされているのか」

「⋯⋯私と、悲鳴嶼様は、全て知っています。冷静に対処し、秘密を隠し通せる柱は、私たちだけだと、判断された様です」

「痣の件は──」

「まだです。尤も、条件をお伝えした所で、すぐに発現させられる様な物でもありません。⋯⋯実は、私の他にもいるんですよ、痣者が」

「どいつだ?!」

 冨岡は息を呑んだ。柱の中には、宇那手の他にいないはずだ。一般隊士の中に、痣を出せるだけの実力者がいるのなら、今すぐ階級を引き上げるべきだと思った。

 宇那手は苦笑し、冨岡の背に手を回した。

「竈門君です」
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