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【鬼滅の刃】継ぐ子の役割

第70章 隔てる壁


「⋯⋯冨岡の言う通りだ」

 伊黒は、初めて冨岡の思考に触れ、理解した。これまでロクに口も利かない、わけの分からない人間だと思っていたが、彼は紛れもなく柱に相応しい心構えを持った剣士だった。

「俺たちは、当代柱の中で、最も呼吸の才能に恵まれた剣士に嫉妬している。悪いのは俺たちだ。だが、俺たちも、足掻き続けている。その醜態を他人に見せないだけで」

「だけど、僕が努力していなかったのは事実」

 この場の誰よりも、短期間で己を鍛え上げた時透が溢した。

「周りが評価するほど、僕は努力をしていない。天才だって言われて、あっという間に柱になって⋯⋯。だけど、僕は本当に血を吐く程の努力をしなかった。そうしなくても勝てたから。でも、最終選別の会場で、僕は志願者の過半数を死なせてしまった。火憐さんはほんの数人。あとは守り通した。他の柱は知らないけれど、僕の努力が足りなかったのは事実。刀も折れちゃったし。記憶を取り戻す努力だって、積極的にしていない。⋯⋯里に戻るよ。もっと強くなる」

 彼はふらりと立ち上がり、一応産屋敷にお辞儀をすると立ち去ってしまった。

「火憐様」

 屋敷の奥から、箱を持って輝利哉が現れた。

「以前依頼されていた物です。ご確認をお願い致します」

「ありがとうございます」

 宇那手は礼を言い、輝利哉に歩み寄って木箱の蓋を開けた。

「型が他に漏れている可能性は?」

「御座いません。刀鍛冶職人縁の者に、火憐様の製図をお渡しして作成しました」

「では、他の柱にも、独自の紋様を考えていただいてください。今後は此方で封をした手紙を送ります」

 宇那手は箱の中身を柱達に見せた。

「これは異国で使われている、封蝋印というものです。手紙が他者の手に渡り、封を切られて仕舞えば一目瞭然。加えて、印の模様を独自に考えれば、偽造も防げます。鴉を使っての、手紙の遣り取りが万全で無い今、役に立つかと思われます。後日、皆様にも使い方をお伝えします」
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