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【鬼滅の刃】継ぐ子の役割

第70章 隔てる壁


 初めて宇那手の戦う姿を見た不死川も、背中に汗をかいていた。

「おい⋯⋯時透は確かに呼吸を使ったよなァ?!」

「拾壱ノ型だ」

 冨岡が言葉少なに返した。

「あれは、まだ序の口だ」

「だったら、本気を出すよ!」

 時透は刀を構え直した。

(伍ノ型、霞雲の海)

「水炎の呼吸、拾壱ノ型、流炎舞」

 宇那手は、敢えて技名を口にした。時透が放った全ての斬撃は、切り刻まれて無に帰した。

「日の呼吸、壱ノ型、円舞」

 パキンと音がした。時透の刀が折れたのだ。彼は茫然自失で立ち尽くしていた。

 宇那手は、優雅に刀を収めた。

「無惨は私よりも強いですよ。⋯⋯お伝えし忘れていた事がありました」

 彼女は産屋敷に顔を向けた。

「あいつは、何度もその機会がありながら、私を殺そうとはしなかった。それどころか、鬼にならないかと勧誘し、血に順応すれば、すぐに上弦の数字を与えると持ち掛けて来た。あくまで可能性なのですが、鬼舞辻は、私が寿命で死ぬまで、時間を稼ぐつもりだったのかも知れません。ですが、昨晩あいつは、焦りからか、私に対する信頼からか、致命的な失敗を犯しました。無限城の入り口を私に教えてしまったのです。向こうが仕掛けて来なければ、用意が整い次第、此方から攻め入る事が出来ます。⋯⋯無一郎君」

 宇那手は、動きを止めていた少年の肩に手を置いた。

「私の刀は、貴方の物よりも軽く、強度が低い。貴方の敗北に言い訳は通用しません。里へ戻って、刀を打ち直して貰い、鍛錬に励んでください。早く本来の貴方を取り戻して、力を引き出してくださいね」

「⋯⋯違う。貴女は他の柱と違うんだ⋯⋯」

 時透は、まだ呆然としたまま呟いた。

「動きさえ、追えなかった⋯⋯。冨岡さんと同じ型⋯⋯。だけど、威力も精度も違う」

「それでも、私は始まりの呼吸の剣士には、遠く及びません。何故か分かりますか?」

「⋯⋯分からない」

「私が、女だからです」

 宇那手は、例え様も無い、憂いを帯びた表情で答えた。
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