第11章 産屋敷耀哉
その話を聞き、宇那手は、自分が完全に信頼されている事を確信した。並の隊士が知り得ない情報だ。彼女は本気で頭を回転させた。
「鬼舞辻は、炭次郎様の特徴を、他の鬼にどの様に伝えているのでしょうか?」
「私の知っている限り、耳に花札の様な飾りを付けた少年、と言っている様だね」
「では、炭次郎様自身では無く、耳飾りについて調べるべきです。彼には他にも目立つ特色があります。額の痣や、羽織り、背負っている木箱。ですが、鬼舞辻は、耳飾りと言った。着脱する可能性のある物を、敢えて目印にしたのです。元の持ち主が誰だったのかを探っては如何でしょうか? ⋯⋯確か模様は日の出。それに、あの子は妙な呼吸法を使用していました。炎ではありませんでした。であるならば、近いのは、燃える火か、日の出の日です。炎の呼吸の呼び名について、厳しい決まりのある理由に繋がるのではありませんか?」
「⋯⋯少し時間をくれるかな」
産屋敷は、座布団の上に戻り、表情を一切変えずに思考した。
宇那手と実際に話して分かった事がある。彼女は剣士よりも、軍師に向いているのだ。屋敷や一族を守らせるのに、十分過ぎる頭脳を持っている。
しかし、そうすれば、今後の作戦に彼女を巻き込む事になり、大きな戦力の喪失に繋がるだろう。
「火憐、私の寿命が判るかな?」
「⋯⋯どんなに長く見積もっても、十五年です」
「正しい。だが、鬼舞辻と戦う事を考えるなら、それよりも早く命を落とす可能性が高い」
「っ?!」
宇那手は、ぎょっとした。産屋敷が両手を揃え、深々と頭を下げたのだ。
「お館様! 何故その様な──」