• テキストサイズ

【鬼滅の刃】継ぐ子の役割

第67章 心のままに


「それは、私も同じです。冨岡さん、前を向いて生きてくださいね。例え私が傍にいなくなっても。⋯⋯胡蝶さんを支えてください」

「いや。俺はお前を選んだ。もう決めた事だ」

 冨岡の揺るぎない言葉に、宇那手は目を伏せた。そして、彼の背に腕を回した。

「死にたくないな⋯⋯。悔しいです。こんな当たり前の事を願う様になるなんて。明日が来て欲しい。一年後も、七年後も、年老いるまで⋯⋯明日が来て欲しい。貴方が与えてくださった。生きたいと思う人生を。明日を望める様になったのは、貴方のお陰です。でも」

 彼女は腕に力を込めた。

「欲しいと思った時には、既に当たり前の物では無くなっていた。明日が来るか分からない。でも、こんな生き方でなければ、納得出来ない。やる事は決まっているのに、心が二の足を踏んでしまう。貴方と離れたくない!!」

「お前が望むなら、共に逃げる。隊を抜ける」

「何処に逃げるの?」

 宇那手は悲しげに笑った。

「無惨は私を追い掛けている。国外? 今は戦争中で、渡航も難しい。戦わなければ、自由はありません。何の罪もない貴方を巻き込んで、一生隠れて暮らすなんて嫌です。困らせてごめんなさい」

 彼女は身体を離し、席に座り直した。

「大丈夫。上手くやります。柱ですから」

「本当は、お前が戻ってから渡すつもりだったんだが、今が相応しい様だ」

 冨岡は袖から何かを取り出して差し出した。

「お前には、何でも与えてやりたいと思っていたが、お前は何も欲しがらない。同じ物ばかり贈り続けてすまなかった。少々無骨だが、頑丈だ」

「これ⋯⋯」

 懐中時計だった。瞬間、宇那手は雷に打たれたかの様に、策を思い付いた。

「ありがとうございます、冨岡さん。本当に⋯⋯でも、先に⋯⋯あの⋯⋯厚かましですが──」

「用件を言え」

「方位磁針を隊士に携帯させて欲しいんです」

「全員にか」
/ 766ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp