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【鬼滅の刃】継ぐ子の役割

第67章 心のままに


「はい」

 宇那手は冨岡から離れ、座り直した。

「無惨は逃れ者に容赦無い。珠世さんは認知され、抹殺対象とされている。禰豆子さんも目を付けられている。でも、逃れ者はあと二人います。愈史郎さんの存在を伝えるわけには行きません。もう一人⋯⋯珠世様と行動を共にしている鬼がいます」

「他にも、人間に与する鬼がいるのか!」

「はい。以前浅草で、竈門君が無惨に詰め寄った時、奴は通り魔的に男性の肩に爪を立て、鬼にし、騒ぎを起こしてその場を去りました。その男性は、珠世様の元で治療を受け、人を喰わずに理性を取り戻しました。血鬼術も扱えるとの事です。無惨は、全ての鬼の能力を把握しているつもりですが、浅草の男性については認知していません。臆病な奴は、逃れ者を放ってはおかないはず。それでも足りなければ、以前譲っていただいた、鬼の治療薬を差し出します」

「冷静になれ」

 冨岡は、宇那手の頭を撫でながら囁いた。

「もう一度考えてくれ。縁もゆかりもない人間の為に、それだけの情報を差し出す価値があるのか?」

「あります」

 宇那手は、即答した。

「価値のある情報なら、また作れば良い。私はあの母子を放って置けない。鬼に襲われると分かっている人間を、鬼殺隊が放っておくわけには行きません。隊の存在意義に関わります。私は、鬼殺隊の正当性を証明する為にも、鬼舞辻無惨と向き合う必要がある。隊の損失になるからという理由で、一般市民を切り捨てる事など、断じて許されません」

「熟慮の結果なら、認める。こっちは任せろ。信じる」

「⋯⋯誓って⋯⋯身体を犠牲にはしません。私を大切にしてくださる方の為に」

「分かった。それでも⋯⋯本音を言うのなら無茶をやめて欲しい」

 冨岡は、袖で人目を遮り、宇那手の額に唇を落とした。

「何よりも、生きていて欲しい。手の届く範囲にいて欲しい。守りたい。命に代えてでも、守りたい」
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