第11章 産屋敷耀哉
「彼に、ですか」
「あの子は、お前が期待するほど強くは無いが、お前が思っているほど弱くも無い。心配は要らないよ。今はしのぶに守られているしね」
「かしこまりました」
再び頭を下げた宇那手に、産屋敷は、感覚を以って近付き、肩に手を置いた。
「詫びねばならないことがある。最終選別で、お前が守り切った、二十四名の合格者について」
「その必要はありません。彼らは約束を破ったのです。当然の報いです」
宇那手は、最終選別時に、恐怖心から闘う事を諦めた参加者全員を、条件付きで守り通した。
隊列を率いる様に全員で東へ向かい、鬼は全て宇那手が斬った。
七日間が過ぎたら、鬼殺隊入隊を諦めるか、戦線離脱をし、別の方法で貢献する道を選ぶ事を条件に庇ったのだ。
しかし、半数はその約束を破り、平然と入隊した。俸給が良いからだ。
その結果、下弦の十二鬼月との戦いに送られ、全員死んだのだ。
「これを見てくれるかな」
産屋敷は、書簡を宇那手に手渡した。彼女が素早く目を通すと、覚えのある名前が複数あった。
「那田蜘蛛山で負傷した、隊士の一覧だ。戦線離脱していた火憐の同期には、十二鬼月がいる事と、お前が戦っている事を伝えた。その上で、彼らは戦った。そして、生き残った。君の恩に報いるために。この先も、戦うと言っているそうだよ」
「⋯⋯私のせいで、危険な目に⋯⋯」
「火憐は正しい判断をし、人を惹きつける才能がある。最終選別でのお前の行いは、結果的に強い隊士を残す事に繋がった。柱が九名と定められていなければ、私は喜んでお前を指名しただろう。今の実力でも、義勇に匹敵する。実際、しのぶと義勇は、自分の席が空いたらお前に譲ると申し出てくれた。これまでの討伐数や実績を鑑みても、柱と同等の待遇を享受する権利がある。何か望みがあれば、遠慮なく言って欲しい」