第67章 心のままに
(肩も腕も、三日もあれば完治。左腕は問題なく動かせる。全身の動作に支障は無い)
二時間も横になっていると、襖の開く気配がした。時透が様子を見に来たのだ。しかし、宇那手が目を閉じていると分かると、すぐに立ち去った。
宇那手は、ようやく活動を開始した。音を立てない様に荷物を纏め、日輪刀を腰に差し、窓から飛び降りた。そして、里に常駐している隠を見つけると、詰め寄った。
「静かに聞いて。任務があるの。外へ出して。命令よ」
「は⋯⋯で⋯⋯ですが、宇那手様は確か──」
「言うことを聞いて。時間が無い。生きていたいのなら、従って」
「⋯⋯っ駄目です!! 貴女は休まないと!!」
隠が折れなかったので、宇那手は彼女を殴って気絶させ、自ら里の外に飛び出した。
走って、走って、森を抜けた。
(なるほど。私の担当地区よりも、大分北ね。町まで数時間)
上手く行けば、明け方には戻れる。
(心配を掛けて、ごめんなさい、みんな。それでも私は、燃える様に生きたい!!)
「カァー!!」
鴉が宇那手の肩に舞い降りた。冨岡の物だった。
「着いて来ては駄目。あの人に伝えて。私を信じて、と。心から、愛している、と」
「直チニ戻レ!! 里ヘ戻レ!!」
「駄目」
宇那手は、蒼天を見上げて、笑いながら答えた。
「貴方だって、籠に閉じ込められるのは嫌でしょう? 私は人間なの。思うままに動くわ。止めたければ、力尽くで止めてみなさい!!」
彼女は鴉を振り払い、一気に人里まで降りた。
(冨岡さん。私は性格が悪いんです。本当は、自分さえ良ければ、それで良い。したい様にしたい。心に蓋をしていたけれど、もうやめます。私が奪って来た命を、極限まで活かせる様に生きたい!! 私をこういう風に育ててくださったのは、貴方です。柱の皆さんです!!)
「おい、女が凄い勢いで走って行ったぞ」
「全く最近のヤツは、はしたないな。髪を振り乱して」
「全部聞こえてますよー!!」
宇那手は、大声で叫び返した。仕方がない。速く走るためには、腕を大きく振る必要がある。