第65章 If〜煉獄さんが夢主を継子にしていたら〜
「風邪を引くから、早く拭いてしまいなさい。それから、明日、君を水柱に引き渡そうと思う。このままでは、いずれ死んでしまう!」
「嫌です!! 絶対に嫌です!!」
火憐は、初めて感情を剥き出しにし、煉獄に詰め寄った。
「どうしてですか?! 私は一度も任務に失敗していません! 十二鬼月も倒しました!!」
「では、金輪際父上に近付くな! 支えるのは、家族の務めだ!」
「私は⋯⋯私は家族では無いのでしょうか?」
火憐は声を震わせた。
「此処を、自分の家だと思えと命じたのは貴方です!! 私は⋯⋯私は⋯⋯」
「実の父親と口吸いをする娘がいるものか。今此処で選びなさい」
煉獄は火憐を布団へ押し倒した。
「この家の母になるか、俺の継子そして、嫁になるか」
「⋯⋯師範の継子及び嫁になります」
事務的な口調の回答に、煉獄は珍しく腹を立てそうになったが、火憐が赤面し、視線を逸らしたので、落ち着いた。
彼女は困惑した様子で、口を開いた。
「ぐ⋯⋯具体的に、どの様な振る舞いをすれば良いのでしょうか。し⋯⋯師範と口吸いをすれば、良いのですか?」
「それも良いな! だがしかし、一番重要なのは、俺以外の男を追い払う事だ! 父上も例外では無い! 嫁が不貞行為を働いた場合、どうなるかは分かっているな?!」
「心得ております」
火憐は、スッと目を細めた。
「貴方の手を汚させるつもりはありません。私は自分で自分の首を切ります。命を以って償います」
「い⋯⋯いや」
明瞭な答えに、煉獄の方がたじろいでしまった。確かに、姦通の罪を犯した者は、その場で殺されるのが殆どだが、あっさり受け入れる者はそうそういないだろう。
「君なら、本当にやりかねんな! まず、相手を殺して、戻って来なさい。君の処遇については、俺が考える!」
「生殺与奪の権を他人に握らせるなと、水柱様に教わりました」
「うむ⋯⋯。とにかく、君が君の身を守れれば、それで良い!」
「承知。では、着替えを取りに、部屋へ戻っても良いでしょうか?」
「この流れで何故、良いと思った?!」