• テキストサイズ

【鬼滅の刃】継ぐ子の役割

第10章 不死川実弥


「柱の能力を疑っているわけではありません。貴方は禰豆子さんの首を容易に撥ねられたでしょう。ですが、貴方は強いが故に、根本的な事をお忘れです。人喰い鬼は、どうやって増えますか? この傷口に鬼の血が入ったら、どうするおつもりだったのですか? 貴方は禰豆子さんを刺していた。⋯⋯あの時、貴方の最も近くにいた人間はお館様です」

 不死川は、返す言葉も無かった。水柱の継子は、師範よりも遥かに頭が良く、言葉や感情の出し惜しみをしない。批判では無く、もっと別の感情が伝わって来た。

「それに、貴方が誰よりも鬼を憎んでいる事は伝わって来ました。そんな貴方が鬼になるなんて、悲し過ぎます。惨い。柱が、柱の首を撥ねるなんて⋯⋯そんな馬鹿な話、あってはなりません。日輪刀も⋯⋯鬼を斬るための道具です。それでご自身の体を傷付けるなんて⋯⋯。もし⋯⋯もし、刀身に鬼の血液が付着していたら⋯⋯」

 宇那手は処置を終え、再び膝を着いた。

「出過ぎた真似をお許しください」

「テメェ⋯⋯いや、お前はなんで、冨岡の傍にいる? あいつはお前の親を殺し、鬼を庇った」

「師範は命の恩人です。心優しい人です。それに、鬼を強く憎んでいる。⋯⋯竈門兄妹の件は、あくまで例外中の例外です。不死川様も、どうか師範を嫌わないでください。あの方は言葉が足りないだけで、貴方と同じ様に、鬼を憎んでいます。他の柱と関わろうとしないのは、自身の能力を過小評価しているからなのです! 肩を並べられる存在ではないと⋯⋯」

「オレは鬼が嫌いだ。鬼を庇う奴も、同じくらい。だが、お館様とお前に免じて、危害は加えないと約束する」

 不死川は、宇那手の横を通り過ぎ、見回りの経路をズンズン進んだ。

 彼は怒りに支配されていた。大概の時間は、怒りに駆られて生きているのだが、その感情の色が微妙に違っていた。手当てされた左腕を見て、無力な人間だった頃を思い出した。

 怪我を負えば、必ず母が手当てをしてくれていた。

 戦いに身を投じてからは、自分の体を自分で傷付け、その血の匂いで鬼を惑わし、倒して来た。それが当たり前になり、傷だらけになる事を、誰一人として気に掛けてはくれなかったのだ。

 本当は、何も知らずに生きたかった。家族に囲まれ、平穏に。鬼の存在など迷信と言い切り、何も失わずに生きたかったのだ。
/ 766ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp