第62章 最悪の集会
「時透君!」
甘露寺が慌てて膝を着いた。
「どうしたの?! 具合が悪いの?!」
「分からないんだ!! 分からないのに⋯⋯涙が止まらない。怒りで身体がいうことを聞かない!! うっ⋯⋯」
「時透。お前は屋敷で休め。私が抱えて行こう。その状態では戦えない」
悲鳴嶼は、軽々と時透を抱え上げた。
「守りたいんだ!! 今度は手を離したくない!! 冨岡さん、お願いだよ!! 宇那手さんを助けて!! 僕は戦うから!! 宇那手さんが、僕の様にならない様に!! 何も思い出せないなんて⋯⋯虚しいよ!!」
「分かった」
冨岡は短く答えた。時透は、悲鳴嶼に連れ出されて行った。
(想定外だ)
冨岡は表情を険しくした。火憐どころか、時透まで本調子では無い。これでは、予測不能の何かが起きた時に、対処出来ないかもしれない。
(炭治郎はどの程度あてに出来る? 玄弥は戦えるのか? 桜里は⋯⋯上弦の鬼には到底及ばない。どうすれば──)
「冨岡」
ずっと沈黙を守っていた不死川が口を開いた。
「テメェは、宇那手をなんとかしろ。玄弥は簡単に死なない。一応異能の鬼を十体以上斬っている。邪魔にならない様に逃げるくらいは出来るはずだ。俺は時透の様子を見る。無理だと判断したら、俺が里へ行く。屋敷へ戻る。俺に出来る事は鍛錬だ」
彼は返事を待たずに立ち去ってしまった。
「どうしよう⋯⋯。どうしよう、私!! 宇那手ちゃんを守れるかな? 宇那手ちゃんの方が強いよね?! 足を引っ張っちゃうんじゃ⋯⋯。わーーん!!」
甘露寺が泣き出した事で、伊黒と冨岡は肩を落とした。状況は最悪に近い。
「甘露寺、取り敢えず泣き止め。柱だろう。担当地域に戻って仕事をしろ。上弦が現れるまでに、少しでも強くなれ」
「うぅ⋯⋯分かった! 頑張ります!!」
そう言うと、甘露寺はバネの様に足を使い、塀を越えて行った。